« 自句自解113  堤行く・・・ | トップページ | 自句自解115 献花台に・・ »

2023年4月 6日 (木)

自句自解114  昼餉には・・



 

   昼餉には戻るてふ夫白つつじ
(ひるげにはもどるちょうつましろつつじ)2017・4月

 

2017年。この頃すでにS子さんの認知症は進行していたのかも知れない。
夫さんはリタイア後も少年スポーツの指導やら、趣味の陶芸教室やら、シルバーセンターでのアルバイトやらで忙しくされていた。
近くまで行くことがありS子さんの家に寄ってみた。

門を出たすぐの電柱の陰でS子さんがワンコを抱いて立っていた。
「Sちゃん!なにしてるの?」
「お父さん待ってるねん」
「今日は?」
「うん。ボランティア。お昼ごはんには帰るって言うてた」


夫さんが戻られる間、二人でお留守番しよう。と言って家の中へ。
「心配しなくてももうすぐ帰ってきはるから」というと
「うん。でも寂しいねん」
その言葉に胸が詰まる。このころ物忘れが多くなり心細い日々を過ごしていたS子さん。

あれから何年たったかなあ。
もう「寂しい」とか思う事もないのだろうか

 

季語・躑躅(つつじ)晩春
次々と開花するこの低木はその様々な色合いでわれわれの目を楽しませてくれる
とりわけ白いつつじにはハッとする美しさがある。
夫は「つま」と読む。てふは「ちょう」と読み「・・・という」意味

この句を句会で出したとき
(句会では誰の作かわからないのを、選にえらばれると作者が名乗りをあげることになっている)
名乗ると「ほ~っ」という声があがった。
私が未亡人であるという背景をご存じだからであった。
帰ることのない夫を待つ作者というように読んでくださったのだ
おかげで躑躅(つつじ)の白が効いた。

 


メインブログはhttp://nurebumi-2.cocolog-nifty.com/です。ただいま休止中やけど


こちらは「おたまの未亡人日記」の旧ブログです
しばらくの間、俳句(自句自解)に特化して書きます
自分の覚え書きです。
2022秋

 

| |

« 自句自解113  堤行く・・・ | トップページ | 自句自解115 献花台に・・ »

俳句」カテゴリの記事

コメント

帰る事の無い夫を待つ…なんと寂しい句なのでしょうとおたまちゃんの事を思うと感じます。でもS子さんの事だったのですね。「てふ」は私が最初に読んだ我が家にあった絵本上の兄弟のおさがりで「てふてふ」で白黒で蝶々が書かれてました戦後の物のない時代、でも意味が解らずそれっきり。その後まもなく綺麗な色のついた絵本が…嬉しかったです。S子ちゃんの淋しさ、身に沁みますね。

投稿: パコ | 2023年4月 7日 (金) 01時04分

★パコちゃんへ
俳句って面白いでしょ。作者の背景が分かっていて読むのと。そうでないのとで受け取り方が変わってきます。
Sちゃんの事実を詠んだだけなのに、読む人によってはミステリアスな句として受け取って貰えます( ´∀` )
俳句をやるようになって文語体や旧仮名遣いを覚えました。
「てふてふ」ってなんやねん!ですよね。

投稿: おたま | 2023年4月 7日 (金) 12時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 自句自解113  堤行く・・・ | トップページ | 自句自解115 献花台に・・ »