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2012年4月 3日 (火)

一谷嫩軍記(熊谷陣屋)



単純無比なワタクシには、男ってものが理解できない。

なんで、タテマエ優先かなぁ・・
いやね、可愛い女房や息子のために、一所懸命働いて、コツコツコツコツ積み上げて、チョイとした役職についちゃって・・・
それが、男の生きる道と頑張ってきたのに、

あーた!
よその御曹司の身代わりに、息子を殺したら
アカンわ。

「ボクの人生。何やったんやろ・・」
うんうん。わかるよ。
出家して旅に出る気持ち。


京都・南座
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当代吉右衛門の当たり役となった熊谷次郎直実。
「一谷嫩軍記」(熊谷陣屋)
(いちのたにふたばぐんき・くまがいじんや)
を観てきました。

「平敦盛」(たいらのあつもり
笛の名手でもあり、わずか16歳で須磨浦の海に散った儚くも美しい悲劇の若武者。

ってことに、「平家物語」には語り継がれていますがね・・

ちょっと、奥さん。知ってはる?
どうも、熊谷さん。そ。あの実直サラリーマン(源氏の侍)の直実(なおざね)さんが、逃がしてあげはったみたいよ・・・
同い年の息子の首を上司(義経)に差し出して・・・
なんで、そこまでするか!ですって?

ここだけのはなしやし、お隣の山田さんに言うたらあかんえ(なんで京都弁やねん)

実は、敦盛卿は天皇家の血筋を引く方だからと・・・おっと・・シーッ!

どうも、上司(義経)がプレッシャーを掛けたみたいね。
「ワシの胆(はら)を読まんかい!」みたいな立て札をたてっちゃったりしてね・・・

「十六年は一昔(ひとむかし)。ああ夢だ」

このセリフを聞きたさに南座へ足を運ばれた方も多いのではないでしょうか。
吉右衛門の全身から立ち上がる、無常感と虚無。
観る人の胸をつまらせる、演技はさすがだと思います。

この場面のほかにも、息子の首をみて驚く妻と敦盛の母を制し制礼をかつぐ緊張の場面

見どころはたくさんありますが、なんと言ってもこのお芝居でしっかり観ておきたいのは、一等最初の数珠を片手の花道登場だと思います。
既にわが子の首をわが手で打ち落とした父親の陰翳。
そして、思いがけない妻(子にとっては母親)の出現へと移ってゆきます。

初めてご覧になる方、このお芝居だけはネタバレで。

それにしても、やっぱり義太夫狂言はいいです。
複雑な話。複雑な人物像。複雑な心理描写。
一元的手法では表現しきれない歌舞伎の芸を「語り」がクリアに聞かせてくれる。

太夫さんと役者さん。両方いっぺんにだっせ。
義太夫物ってぜいたくやわあ。

吉右衛門の凄さはそのセリフ術にあると言われまする。
言葉としてのセリフ(言葉の意味)ではなく表出される感情。
どう説明したらいいかしら・・
たとえば、「ハハハ」と笑っているのではなく、その「ハハハ」に悲しみも怒りも後悔も侮蔑もあらゆる感情を込めることが出来る。

って、説明なんぞは野暮天でござんした。

熊谷次郎直実・吉右衛門  義経・三代目又五郎
相模・芝雀  藤の方・壱太郎  弥陀六・歌六
梶原景高・由次郎  堤軍次・四代目歌昇  


 


 

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コメント

いやあ、いいですねえ。
吉右衛門大好きです。鬼平もいいけど、
やはり本職の舞台がなんとも重みがあって(テレビでしかみられないけど)
義太夫語りの場面で、役者がただ踊っちゃうみたいなところが、
子どもの頃は理解できなかったけど、
役者の演技と義太夫がうまくシンクロしてるって、
この年になってやっとわかるようになりました。
もっとも両者の技量が秀でてなくちゃいかんのでしょうが。
人形浄瑠璃も、人形の動きがどうにも苦になる時があるので、
いっそ義太夫だけ聞きたいと思います。

投稿: ばんび | 2012年4月 3日 (火) 10時12分

こんにちは
そんな狂言があるんですね。ほんとのこと?
なんて真偽はどうでもいいんですが、
最近、卑弥呼の跡継ぎとして召し上げられた「いよ」の話を読んでいて
育ててくれた両親から 召し上げられて連れて行かれるとき
連れに来た役人が両親に
「もうお前たちの子供ではないので失礼な言葉を使わないように」
と言われている話で私は少しくすぶり(笑)
竹取物語で月(天上)に帰るかぐや姫がもう身分が違うから
お世話になった人たちを全く無視していってしまう話が思い出され
この話では天皇の血筋を重んじるばかり自分の子供を殺してしまうのですかって、
そういうことを美学として賞賛していた時代に
生まれていなくてよかったなぁとしみじみ思ってしまいました。
いつもながら関係ない話でごめんね(笑)

投稿: てんちゃん | 2012年4月 3日 (火) 11時25分

吉右衛門さん、どうしてあなたは吉右衛門さんなの?
ハァァ~
あの眼差し、あの男の色気・・・
良かったでしょ
行きたかった~

投稿: kimi | 2012年4月 4日 (水) 08時13分

ばんびさん
やはり、人形には厳しくていらっしゃる(笑)
義太夫って日本人の琴線をぶるんぶるん震わせますわね。
はしもっさんが、文楽協会への助成金をcutしようとしていますが、文化に理解のない人がTOPにたつのは大阪の不幸やわ。文化をおろそかにしたら国は滅びます!

てんちゃんさん
てんちゃんのお話は、おたまのツボを押さえておりますですよ
歌舞伎は独特のパラレルワールド。
「そんな、あほな!」という話が満載です。そこが歌舞伎の魅力でもあります。

そうだったらいいのにな、とかきっとこうやで・・と、史実がドラマに仕立て上げられます。多くは「んな、あほな」ですが人間臭くて、説教臭くない話が多いようです。
見終わると、ああ面白かった。で終わる、それが長く人々に愛されている理由のひとつかもしれません。

kimiさん。
男の色気を語らせたら、おたま2泊3日くらいかかるので、ここでは控えさせていただきます
吉右衛門さんの魅力は、一ひねりした人間像を演じるのが旨いというところですね。
強いけれど弱い。賢いけれど愚か。屈折が重層的な人物像を浮き上がらせる。そこが人間臭く、可愛い。

あ。おたまの思う男の魅力(色気)は・・・おっと、長くなるので又の機会に。

投稿: おたま | 2012年4月 4日 (水) 10時09分

歌舞伎で男の色気を感じるのは
片岡仁左衛門です!
声・姿・芸・良しで3拍子揃っています。
話を横取りしました。
海老蔵も良いですがまだ青いかな、もう少し修行を重ねて頂きましょう。
おたまさんの男の色気話しを楽しみに待ってま~す。

投稿: スマイル | 2012年4月 4日 (水) 18時39分

スマイルさん
おたまも、仁左衛門は当代随一とおもってますねんよ。悪いところ言え!と言われても出てきませんもん。うふ

投稿: おたま | 2012年4月 4日 (水) 22時28分

賛成
マイベストは仁左衛門さんですよ~
『盟三五大切』なんて大好きで~す

エビが食べられない私ですが、海老蔵も今一、今ニ。。。

投稿: kimi | 2012年4月 5日 (木) 13時21分

kimiさん
え~っと。こちらが、仁左さまうっとりのスマイルさんです。
スマイルさん。こちらが、仁左さまヘロヘロのkimiさんです。
よろしくおねがいします。

盟三五大切は記事にしていますので、「おヒマなら見てよね私待ってるわ」
               以上

投稿: おたま | 2012年4月 6日 (金) 08時52分

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