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2012年4月 2日 (月)

夜汽車②



民俗学者、宮本常一の本のなかに、中国地方の山間部に住む少女が「あの山の向うには何があるのだろう」と、ずんずんずんずん歩いて初めて海(日本海)を見る。という話があるのですが、生まれた土地から一歩も出ず、そこで生涯を終えるというのは、比較的近代まで、ふつうのことだったようです。

見知らぬ土地は人間にとってあこがれなのです。

私もよく旅をしていたですよ。
「往復新幹線・ホテル込み格安パックでディズニーランド」などというものではなく、自分達で旅程を決めて時刻表片手に・・という旅でした。

もう、ほとんど忘れかけているけど、
日本で一番高いところにある国鉄の駅を通ったので、それは信州の旅だったのでしょう。
2.3泊して大阪に帰ることになりました。
友人の、みっちゃんは時間が自由になる人で、東北を一週間くらい掛けて回ると言って、どこかの駅で別れました。

私は、寝台特急(ブルートレインなんて言わなかったぞ)に乗るべく、フォッサマグナに添って北上したのです。

列車のトラブルがあって、乗り継ぎの「日本海」が遅れました。

どこかの駅でポンと降ろされ「日本海」の到着を待つことになりました。

たぶん、糸魚川の駅だったとおもいます。
ウンにゃ。富山駅だったかな。

深夜のホームは人もまばらでした。

わたし以外に、一人の女性と二人の男性がいました。
この人たちは一緒に旅をしているようでした。
男性はお揃いの光る生地の紫(紫色です!)のジャケットを着ていました。

明るい声で私に話しかけてきました。
「漫才師」だといいました。

MANZAIがブームになるのは1980年のことだそうで、この話はその、もっと前のことです。

「僕達のこと知ってる?」
「見たことある?」

掛け合いのように訊ねられたけど・・・・
あいまいな返事の出来る大人にはまだなっていなかったし、でも、「知らない」ことを「知ってる」とは言えないし・・・・

ベンチに腰掛けている女性と目があいました。
その人は微笑みました。

きっと、小さな店で歌っている人なのだと思いました。
足元にトランクと化粧鞄のようなものがありました。

綺麗な人。
染めた髪が哀しくて、孤独な感じの人でした。
旅をしているというより、やさぐれているといった風情で・・・

その後、「男はつらいよ」のリリーさんを見たとき、このお姉さんを思い出しました。
浅丘ルリ子のりりーさんは秀逸だとおもいます。

ああ、こんな人、本当に居る。
本当にいた。会った事がある。と思いました。

より早く、よりきちんと交通手段が確保できるようになって、道中のハプニングやトラブルに出会うことが少なくなりました。
サンドイッチ食べて、缶ビール飲んだらもう、東京です。
誰とも、おしゃべりもせず・・・

「旅情」を旅の道中で得ることが難しくなっています。

 

「人は到着のためにではなく、旅のために旅をする」
ってゲーテか誰かの言葉です。
ゲーテに言われなくても、そう思うな。


 


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コメント

夜汽車シリーズ続きそうね。
昨日の夜汽車で思い出した。
“花嫁は~夜汽車に乗って~嫁いで行くの~”
あのころは夜汽車だったのね。
修学旅行も、貸し切りの夜汽車だったわ。
男子の方が多くて、こっそりお酒回し飲みしてた。

先生は全然怒らなかったなあ…。

投稿: ばんび | 2012年4月 2日 (月) 01時42分

おたまさんのブログには哀愁が漂います。
まるで小説を読んでいる様です。
夜汽車に乗って旅をすることも無く、ましてや一人旅もした事もない私です。
いつも燦々と降り注ぐ太陽の下を賑やかしく旅をした思い出しかないのでおたまさんって大人だな!っていつも感心しています。

投稿: スマイル | 2012年4月 2日 (月) 11時55分

ばんびさん。
そうそう、でお風呂を覗いた男子が熱湯をぶっ掛けられるのよね。
みんな、アホやった~~

「夜汽車」というキーワードであと五件くらい書けそうだけど、又にします。

スマイルさん。
おたまって・・アヒル??
いや!ニヒル?

むすめっこの頃の自分を振り返ると、「どうしようもないヤツ」だったと恥じ入るばかりです。
だと言って、今が「どうにかなった」かというと、そんなことは全く無くて、消え入りたい気分でございます。

その割りに、大きな顔してる?
それを言われると・・・

それも含めて、恥を積み重ねて生きている次第です。

投稿: おたま | 2012年4月 2日 (月) 12時40分

おたまさんこんばんわ
私は行くあてを決めずに方向だけ決め放浪するのが昔から好きで、私の中ではこれが旅
スケジュール通りに移動するのを旅行と分けています
一人旅だと話しかけ安いのかいろんな人が話しかけてきてくれます
困ってると助けてくれたりもします
ひととのふれあいは旅の醍醐味ですよね
単車、車、電車、船、日本は結構回ったのでこれからはもっと世界へ飛び出したい
でも先立つものが・・・

投稿: poo | 2012年4月 2日 (月) 23時11分

pooさん。
あらま、そうなんですか
POOさんみたいに旅心のある人なら、例えば一つ隣の駅で降りても、町内の見知らぬ路地に入っても「旅」ができますね。
でもやっぱり、遠くに行きたい^^

今のおたまは、家のローンも済んで、子ども達も自立して、お金のやりくりも少し、出来るようになりました。
自由な時間だらけです。

この歳になったから得られたのですが、一番一緒に行きたい夫はとっとと消えちゃうし、体力も無くなってくるし、何よりも感性が鈍くなってきます。感動する心を忘れてはいないつもりでも、やはり違います。

どうぞ、お若いうちに、「旅」を重ねてください。きっと素敵な財産になりますよ。

投稿: おたま | 2012年4月 3日 (火) 09時19分

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