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2011年6月 8日 (水)

名もなく貧しく美しく



「どうか、僕と結婚してください。きっとあなたを幸せにします。」
「私はあなたを信じます」

・・・・・・・・

美しい言葉やねえ

「○○○ったら○○するぞ!」と言った
ひっちゃんとは大違いやわ。

女性の言葉はさらに続く
「私達は一人では生きてはいけません。二人で協力しましょう」

「追悼特集・女優 高峰秀子」として11本の代表作を上映していましたので、そのうち2本を見てきました。

傑作と言われる「浮雲」「乱れる」「二十四の瞳」はすでに見ていますので、まずは、「名もなく貧しく美しく」をチョイス。


戦争末期から終戦後を生き抜いた聾唖者夫婦の物語です。
聾唖であるが故の困難と共に差別による生き難さもよく描かれています。

1961年の公開ですが、今では「不適切な表現」とされる言葉が普通に使われています。
現代が差別のない成熟した社会であるかどうかは別として、ああ、そんな言葉、使われなくなったな・と思いました。

ストーリーについてはPCなどで調べられますので
感想を述べます。

秀逸は夫・小林桂樹の演技です。中途失聴の高峰秀子演ずる妻と違い、この映画の中で彼は一言のセリフも発しません。しかし、彼のなんと能弁なこと。

歌舞伎好きのある人から「名優とは役をよく演ずる人ではなく、役がその人になっていることだ」と聞いたことがあります。

映画の中の小林桂樹は彼そのものだと思いました。

そしてもう一人、高峰秀子の母親役、原泉。
ある時は毅然とある時は諦念から来るおおらかさで、聾の娘の盾となり協力をおしみません。
NHKの児童劇などで、すごく意地悪なおばあさん役(次郎物語だったかな)の印象しかなかったのですが、あらためて魅力的な女優さんだと思いました。又、中野重治夫人という視点でみると、なにか歴史の中の人のような気がして不思議でした。

「あなたの苦しみは私の苦しみです。だから私にはあなたの苦しみがよくわかります」

覚悟のうえで放蕩の弟のところへ行く妻を追いかけた夫が車両を隔てた窓越しに会話をする感動のシーンです。

もう一箇所、新婚旅行の旅館で将来を語り合うときの手話も美しい。

高峰秀子は著書の中で手話について、
「あまりのむずかしさ、ややこしさにへこたれた
実際の聾唖の人たちから不満の声があがるのを承知で、見た目に美しく流れるような手話に「勝手に料理」してしまった。」

と書いています。

私が、子ども時代に見ていた手話は、高峰秀子が言うようにテンポが早く、どこか荒っぽいものでした。
そのため、知らない人(道行く人など)は奇異な目で眺めていました。

幼友達Yゆきの両親も聾唖者でした。
時代も丁度同じ頃。映画の中の一人息子がYゆきに重なります。
「ジェスチャー」を見るのを楽しみにしていた、Yゆきのおばさん。一度も授業参観に行ったことのない、おばさん。

世話焼きの、私の母がYゆきのお姉ちゃんの中学最後の運動会におばさんを連れて行きました(姉ちゃんはリレーの花形選手だった)
姉ちゃんの驚き怒ったような顔。
おばさんの悲しそうな顔。
高鉄棒のところから背伸びしてリレーを見ていたおばさんの顔。

色んなことが重なって、泣けました。

映画の最終の、ワンシーンに若き日の加山雄三が警官(自衛官?かも)の役で登場します。
ハッと、するほどの美青年ぶりと存在感で、後年の活躍を予感させます。

成瀬巳喜男の名作「乱れる」はこの映画の三年後1964年の公開です。

監督・脚本 松山善三

出演は他に 草笛光子・沼田曜一・多々良純・河内桃子・荒木道子・根岸明美・高橋昌也・加藤武


 


 

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コメント

この映画観たような、観なかったような・・・
この題だとあの♪おいら岬の~、燈台守を~♪を
思い出すのんですが、どこかで嗜好?思考回路が
こんがらがっておるようです・・・汗

高峰秀子さんは素敵な女優さんでしたねぇ~、
老後のための整理整頓を書かれた本は好きで
真似しようと想いながら凡人にはなかなか真似できないと思うこのごろですぅ~・・・

投稿: ヘルブラウ | 2011年6月10日 (金) 18時08分

ヘルさん。きっと、「喜びも悲しみも幾年月」だと、思います。
佐田啓二がでてるのよね。ちょっと、グレゴリー・ペックに似ていませんか?

今回11作品の中に、入っていなかったのですが、「アンコール上映」ということで、この「喜び・・」が今、かかっています。
見てこようかなあ・・

投稿: おたま | 2011年6月11日 (土) 09時36分

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