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2011年4月 1日 (金)

嘘をついた①



今日は四月一日。万愚節。

トシも忘れるくらい生きているけど

800回は嘘をついたわね。

都合の悪い記憶は忘れることにしているのに

最初についた嘘って覚えてる。

 

昔・昔のその昔

二年生に進級して最初の遠足は、一年生の「お迎え遠足」です。行き先は「山王公園」と決まっていました。

私達も前年、小学校に入学して最初の遠足は、六年生のお兄さんやお姉さんに手をつないでもらう、「お迎え遠足」でした。

あれはその次の遠足。
南動物園だったと覚えているので、それは、「お迎え遠足ではなく」きっと、秋の遠足。

前の日の「さよならの会」はいつもにも増してざわざわしていて、担任のダテ先生は黒板に明日の持ち物を書いておられました。

みんな、嬉しくて仕方ないのです。
だって、あしたは楽しい楽しい遠足です。

そのとき、隣の席のY君がぼそりと言いました。
「オレ。遠足には行かんと」

驚いて聞きました「なして?」

Y君の次の言葉は、わたしをもっと驚かせました。
「オレ。遠足には行かんと。
いっぺんも行ったことのなかと」

「え~。いっぺんも、なかと?なして行かんとね」
「なしても」
「遠足、好かんとね?楽しかとに」

・・・・・・

・・・・・・・・・

「オレの母ちゃん、弁当ば、よう作りきらん」

・・・・・・・・・・・・・。

 

衝撃という言葉をこのときのわたしは知りませんでしたが、胸がどきっと音を立てたように思いました。

Y君は、クラスの嫌われっ子でした。乱暴ですぐ人を叩きます。
学校もしょっちゅう休むし、父ちゃんは昼から酒をのんだくれていました。母ちゃんがニコヨンをしていると聞いていました。

所得倍増計画が打ち出され、日本は高度経済成長へと驀進していました。道路や建物が作られ・・・それは人力・・安い労働力に支えられていました。

ニコヨンは日雇いで240円貰うのでそういうのだって、当時の子どもは知っていました。
仕事は「よいとまけ」です。見た事はないけど、Y君の母ちゃんも男に混じり肉体労働をされていたのでしょう。

時々、教室のうしろで先生が新しいエンピツや消しゴムをそっと渡しておられました。当時はそんな子がクラスに二・三人いました。

たまたま、その場面を見てしまったおたまは「見てはいけなかった」と思ったものです。

さよならの会の場面にもどりますが、

その時わたしはどういう心境だったのでしょう、
とにかく必死でY君に「遠足に行くよう」勧めます。

Y君の母ちゃんが朝の暗いうちから仕事に行くことは察しがついていました。

「姉ちゃんに作ってもろたら、よかばい」「姉ちゃんのおらすやろ?」

たしか、中学生のお姉さんがいるはずでした。

 

                       (つづく)

 


 


 

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