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2010年4月 4日 (日)

観音様の桜

一度たずねてみたいと思っていた京田辺市の観音寺へ行ってきました。

三年前、京阪特急で隣り合わせた年配のご婦人が「飴ちゃん」をくださいました。

関西以外の国民の皆様、驚かないで下さい。
「飴」は関西レディのためのコミュニケーションツール。
もちろん、初対面の方です。

私は山科へ。その方は醍醐寺へそれぞれ桜を見に行くところでした。

電車はちょうど八幡の背割り堤を過ぎようとしています。
宇治川・木津川・桂川の三川が出合い、淀川となるところです。
堤には帯のようになって満開の桜が咲き続いていました。

「菜の花や月は東に日は西に

ここの辺り、 与謝蕪村が有名な句を詠んだ場所です

そのご婦人に「是非、山城の観音寺へ行ってごらんなさい」と薦められました。「夢のような場所よ・・・」

・・・・・

それから三年後の早春。

山城の国は京都南部、奈良と大阪に隣接するのどかな里です。
寺へ続く参道の両脇は菜の花畑。
小川の水音もきこえます。

 「托鉢僧花菜あかりの下に立つ」 おたま

古木の桜並木はまだ、ちらほら咲きでした。

この、穏やかな里山のふもとに千二百余年前に安置された観音様が居られるのです。

「国宝十一面観世音菩薩立像」
わが国有数の天平仏です

本堂に住職がおられました。お前立ちの参詣と思っていたのに、「はいはい、どうぞどうぞ、コチラへいらっしゃい」と厨子の扉を開けてくださいました。

言葉もありません。

手を伸ばせば触れることのできる位置に
秘仏は若々しく生命力あふれる光を発して立っておられました。

観音様独り占め状態。

仏像とは衆生がおのずから手を合わせる信仰の対象であることを、あらためて思わずにはいられません。

法隆寺・百済観音興福寺・阿修羅像。
それぞれの美しさに圧倒されますが、ガラスケースの中の美術品のように鑑賞しながら人は通りすぎます。

国宝となっている十一面観音は全部で七体ですが、ここ、観音寺のように「常に我々とともにある」お姿でまつられている仏像は無いとおもいます。

本堂の左脇には不動明王像。
「これは、新しいよ。鎌倉時代や」・・・
ご住職に和して真言を唱え満ち足りた気持ちで寺をあとにしました。

おおらかな天平の名残をとどめる古刹。
また、訪ねたいと思います。

寺を出ると小さな小川を挟んだ正面に満開のしだれ桜が見えました。


 

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コメント

おたまさんの文章に魅せられました。京山城の観音寺には行った事はありませんが、おたまさんのブログからその夢のような場所が浮かんで、イメージが充分に伝わってきました。
多才な文章力に毎日楽しませて頂いてます。

投稿: スマイル | 2010年4月 5日 (月) 11時28分

スマイルさん
お褒めいただいて、こっぱずかしいです。
山城の地は奈良のおおらかさと京都の繊細さが入り混じった魅力があります。吉祥天女像で有名な浄瑠璃寺、国宝五重塔のある海住山寺・・・若い頃に巡ったときとまた違う発見があります。
この秋は山城の古寺を探訪してみようと思っています。

投稿: おたま | 2010年4月 6日 (火) 07時51分

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